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ひとりムンタギロフ祭り [バレエ]

話は前後しますが9月の連休の合間、ロイヤル・オペラハウス・シネマのアンコール上映を
見に行きました。
上演した演目は「バーンスタイン・センテナリー」「くるみ割り人形」「不思議の国のアリス」   
「白鳥の湖」「マノン」「冬物語」の6作品で、いづれもムンタギロフが出演していたようですが、
私が見に行ったのは「マノン」と「冬物語」です。新作「白鳥の湖」はできることなら舞台で見た
いのでパス。「くるみ割り」はすでに舞台で見てるでパス。「アリス」はDVD持ってるのでパス。
「マノン」と「冬物語」はほとんど日本で上演されることのない作品かと思われたので、ぜひ見て
みたいと思い二日連続で映画館行ってきました。


「マノン」は18世紀のパリが舞台の高級娼婦マノンに恋した真面目な神学生デ・グリューの悲恋の
物語。デ・グリューを愛しながらも贅沢な暮らしに目がくらんで彼を裏切って大富豪の高級娼婦と
なり、デ・グリューに駆け落ちしようと頼まれるも自分を大富豪に売った兄に阻まれ、怒った大富
豪がマノンの兄を殺し、マノンは流刑の刑となり、デ・グリューはマノンを追って流刑地までやっ
てきて看守を殺して沼地に逃げ、そこでマノンは息絶え、デ・グリューの号泣のなか幕が降りると
いう文字通りドロドロのメロドラマです。

今回もワジム王子は”掃きだめにツル”、神学生デ・グリュー役で颯爽と登場、マクミランの複雑な
振付を美しい足さばきで魅せてくれました。笑顔が似合うムンタギロフの号泣シーンはそれだけで
悲劇性アップ。美少女マノン役はロイヤルのアメリカ人プリンシパル、サラ・ラム。いくつになっ
ても少女らしさを失わない可憐なバレリーナなので、無垢で無知であるがために罪を犯すヒロイン
役がぴったりハマっていました。

ロイヤルシネマは本来は世界同時ライブ放送なので、アンコール上映の今回もしっかり休憩時間が
入りました。その間に放送されたインタビューやリハーサル映像が興味深かった。
なんでも「マノン」や「エリートシンコペーション」を振付したケネス・マクミランはフィギュア
スケートファンで、そのために振付にスロージャンプやデススパイラルに似た技が入ってるらしい。
かなりアクロバティックな振付が多く、複雑なリフトも満載。フィギュアが”氷上のバレエ”と
言われているのに対し、逆にバレエがその技を振付に取り入れるのってすごく斬新な感じ。

翌日見た「冬物語」はシェイクスピアの戯曲をバレエ化した比較的新しい作品。
振付も音楽も舞台装置も「アリス」と同じチームと聞いてずっと見たいと思っていました。
とある王国の王レオンティーズが突然、自分の妻と幼馴染の隣の王国の王ポリクシニーズが
通じているのではないかという疑惑に苛まれ(この辺の心理描写の場面はかなり演技力が必要)
妻ハーマイオニーをいたぶり、ショックで幼い息子は死に、妊娠中だったハーマイオニーも出産
の際に命を落とす。生まれたばかりの赤ちゃんは王の命令でどこかの島に置き去りにされる。
幸い生まれたばかりの子パーティダは羊飼いに拾われその村で成長する。大人になったパーティダ
はポリクシニーズの息子フロリゼルと恋に落ち、その噂を聞いた父ポリクシニーズがふたりの中を
割こうと島にやってきて、二人は船に乗ってレオンティーズの王国へ逃げてくる。逃げてきた2人に
会ったレオンティーズはパーティダの首飾りを見て彼女が自分の娘であることを知る。死んだはずの
ハーマイオニーも生きていることがわかり、ラストは和解と結婚式のシーンで幕を閉じる。

ここで若い恋人パーティダとフロリゼルを演じたのが前日マノンとデ・グリューを演じたサラ・ラム
&ワジム王子のペア。「マノン」とは打って変わって明るい農村の恋人たちを、難解なマクミランの
振付とは一味違う民族舞踊をアレンジしたようなウィールドンの振付で明るく演じていました。
、、多分、初演したスティーブン・マクレイを想定した振付なんだろうな~ワジム王子のような
長身のダンサーには踊りにくそうだった。
それを言ったらレオンティーズを演じた平野亮一も初演のエドワード・ワトソンの心理描写には
かなわない感じがした。

やはりインタビュー映像があったのですが、なぜ「冬物語」を選んだのかという質問に今までバレエ
化されてこなかったからとか、第一幕の冷たく堅苦しい王宮での心理劇と第二幕の明るい農村での群舞
という対比を見せたかったからと答えていましたが、思うにウィールドンは多種多様な人種と個性的
なダンサーが集まるロイヤルバレエの特質を活かした作品が作りたかったんだと思う。
単一民族の日本のバレエ団の強みが完全にシンクロしたコールドバレエであったり、同じバレエ学校
出身者で構成されるボリショイやオペラ座はみんな容姿もテクニックも揃っていて誰がどの役
をやっても大差なかったりするのに対し、ローザンヌ経由でバレエ学校にやってくるロイヤルバレエは
イギリス人よりも圧倒的に外国人が多くメソッドも様々。コールドバレエはあんまり得意ではなさそう。
ロイヤルの特徴は個性豊かなダンサーたちであり、そのため既存のバレエ作品ではない新しい作品が
必要だったのだろう。ただ「アリス」も「冬物語」も初演時のオリジナルキャストを念頭に振付
されてるので、どうしてもその後にキャスティングされるダンサーは苦労するよね。
ワジム王子はクセのないダンサーなのでキャラクター系はやっぱり似合わないなって思った。
それでも彼のもつ”陽”のオーラと足さばきの美しさはどんな舞台でも際立っていて見ていて幸せな
気分になる。サラ・ラムとの相性もばっちり。サラ・ラムはほんと妖精みたいなバレリーナだなあ。
対してローレン・カスバ―トソンは容姿も踊りも地味な感じ。それでも唯一のイギリス人プリンシ
パルということで「アリス」も「冬物語」も彼女のために振付られた役なんだよね。
この人の香水で役作りしている話なんかはとっても面白かった。「冬物語」で妊婦を演じるにあたり、
香水が母性を表現する助けになったとか。

そんなこんなインタビュー&リハーサル映像が見られて3時間の上映時間で3600円。結構楽しめました♪


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