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「The Bittersweet Beauty of Adam Rippon」 [フィギュア・スケート]

2月12日付 Vanity Fair の記事です→
題して「アメリカがアダムリッポンに恋した夜」
記事の内容は子供の頃ゲイであるが故に疎外された思い出をもつ男性が、オリンピック
団体戦でのリッポン君の演技を見て、ゲイであることを隠していない彼が多くの人から
賞賛される姿を見て、子供の頃の苦い思い出が癒されるのを感じた、というもの。
ゲイであることを隠していない彼のフランクな発言やエレガントなプログラムはアメリカ
の人々にとってはかなりセンセーショナルな出来事だったようで、リッポン君は新しい
タイプのヒーローと位置付けられたようです。



どなたかがつけられたこの副題↑をみて私が思い出したのは8前のバンクーバー直後に
ストイコ選手が出した「フギュアスケートが死んだ夜」というコメント。
”クワドを入れていないライサチェックはオリンピックチャンピオンにふさわしくない”
という内容のものでした。
んで私も私なりに感じた「フギュアスケートの死んだ夜」を書いてオリンピックシーズンを
締めくくったのでした→
あの時私は”ジョニーはジャッジに葬られた。彼を模した選手は今後いくらでも現れるだろう
けど、けしてオリジナルを超える逸材は現れないだろう”と書いた。


、、、見事に裏切られました。8年もの歳月を経て。かなり不意打ちに。
今アメリカで吹き荒れている「リッポンハリケーン」(本人談)に私は昨年N杯の時に
見舞われたのでした。まさに「アダムリッポンに恋した夜」、フィギュアスケートが
生きていたことを知った夜。ジョニーがたどっていった道を今たどっている選手がいる。
28歳の彼が最後のオリンピックに賭けようとしている姿はもうそれだけで涙だった。


そして彼は彼でジョニーのコピーではなく、まったくオリジナルなスケーターだった。
同じ〇イでも方向性?はほとんど違う。ジョニーは一貫して悲壮感のある音楽を憂いを
帯びた表情で表現する「陰」のタイプのスケーターだった。対してリッポン君はジュニア
時代からドラマチックな音楽を悲しい顔や愛らしい笑顔などクルクル表情変ながら表現
する「陽」のタイプのスケーターだった。その彼が10年もの歳月をかけて天使リッポンから
マッチョなイケメンに変貌し、音楽もクラシックからアップテンポなクラブミュージックへ、
衣装はヒラヒラふんわりからタイトなシースルーへとすべて真逆な方向に変化した。
彼ほどビフォーアフターが顕著な選手って見たことがない。

それはつまりいかに彼の道のりが長く困難なものだったかを物語っている。
2度のオリンピック選考で失敗し、"自分のキャリアのハイライトはもう終わった"と思った時、
何をモチベーションに現役続ければいいのか。
リッポン君自身がインタビューで語ったのは"「全米チャンピオンになる」「オリンピックにでる」
というプレッシャーから自分を解放し、スケートの目的を「よりよいアスリートになる」という
個人的なものに変えた”ということだった。さらにカミングアウトすることで自分を偽るストレス
からも解放され、"自分が何者であるかを受け入れられずして4分半の間にどうやって世界やジャッジ
に自分を見せることができるのか"という問い真向から向かい合ったリッポン君。
リッポン君の髪が試合ごとに違う色になってたのは彼が自分のスケートのスタイルを模索してた
時期だったんだと思う。全米を制したのはそのシーズンだった。そして彼を2度のファイナルと
オリンピックに連れて行くことになるプログラム「Arrival of the Birds」にたどり着いたのは
その次のシーズンだった。このプログラムこそ彼の自分探しの旅の終着点だったのではないかと。

ジョニーも最後のシーズンは自らの殻を破るような二つのプログラムに挑戦した。
SPの「I love you, I hate you」とEX「Poker Face」。もちろん私の好みではなかったけど、
オリンピックや全米での自信に満ちあふれたパフォーマンスはひとり異彩を放っていた!
あの時ジョニーは自分の「白鳥」のイメージをあえて覆し、フィギュアスケートに新境地を開拓
したんだ。


彼らほど自分のアイデンティテをスケートに投影させた選手っていない。
彼らのアイデンティティとは何か?
それはリッポン君の表現するところの”Hot mess”(熱い混乱?めちゃくちゃな人?)なんじゃない
かと。見ればわかるように彼らのプログラムには色んな要素が混在している。男性的でもあり女性
的でもあり、気高くもあり淫らでもあり。ルックスフェミニンで振付も女性バレリーナなのにガツ
ンと大技きめてくるジョニーの「白鳥」しかり、ルックスマッチョで振付はモダンなんだけど動き
はエレガントで柔軟性に富んだレイバックスピンで魅せるリッポン君の「Bird」しかり。
私はその倒錯的な世界に圧倒された。ただただ正直に美しいと感じた。

ジョニーの「白鳥」の衝撃から実に12年。私はまた彼の後を継ぐ選手に出会えた。
そして彼はジョニーと違って世界に受け入れらた!もちろんアスリートとしては勝利とは言えない
けど、SP、フリーともに彼のパフォーマンスの斬新さが話題になり、こんな採点おかしいって声
をあげてくれただけで満足。ソチで彼らのような"クロスジェンダーパフォーマンス"を見せた
男子選手はいなかった。さらにパンツスタイルで男振りする女子選手はいまだに現れない。
そのことを思えば長い時間を経てリッポン君がジョニーが歩いた道をだどってきてくれたことは
ジョニーのレガシーでもある。私はこれからもたとえ勝てなくても彼らの系譜を踏む選手たちを
応援していくんだと思う。



今すっかり春めいてくるの感じながら、私はまた次に秋が巡ってくる頃、昨年自分に起きた一連の
出来事を懐かしく思い出すのだろうと予感している。
N杯のアラサー表彰台[わーい(嬉しい顔)]→スケアメの”呪われたリンク”[がく~(落胆した顔)]→ファイナルでの歌うEX[カラオケ]
→波乱の全米選手権[ふらふら]→オリンピックでの良演技→団体銅[ぴかぴか(新しい)]→アメリカで大ブレイク[爆弾]
私はリッポンファンとしては”遅れてきた者”であったけど、リッポン君のキャリアのラストステージ
とブレイクアウトの瞬間には間に合ったよ!
ジュニアを制してなんと10年。28歳にして初五輪、ケガの克服、カミングアウト、そして4回転と
いう武器を持たずにオリンピックで戦ったアダム・リッポンというスケーターを忘れない。

オリンピックシーズン締めくくるにあたりチームUSAからもメッセージが届いたよ!
リッポン君ではじまり、ジェイソン君で終わる楽しすぎる動画→
名付けて”チームUSAでハイスクールミュージカル”[exclamation&question]




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