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白い花の似合う男 [バレエ]

「ジゼル」も買ってしまった[あせあせ(飛び散る汗)]アルブレヒトは彼の当たり役と聞いて。
ローザンヌのファイナルでもイングリッシュ・ナショナル・バレエでデビューした時
も踊ったそう。

「ジゼル」2幕は昨年の発表会で踊ったばかりなので、音楽にはかなり愛着があります。
もともとは地味な作品という印象があって、発表会でウィリのコールドをやると知った時も
あまり乗り気にはなれなかったのですが、練習で何度も音楽を耳にするうちにその美しさ
にハッとしたのでした。まるで礼拝音楽のような厳かさがありすっかりクリスマス
ミュージックと化したのでした。(ちなみにこの時ジゼルを踊ったゲストダンサーは
イングリッシュ・ナショナル・バレエの元団員)

*写真追加しました!


舞台は中世ヨーロッパ。一幕では田園風景が広がります。衣装も舞台背景もくすんだ色合い。
村人のなかにあってワジム王子扮するアルブレヒトはやっぱり貴族らしいノーブルな雰囲気。
背が高くて舞台映えするので逆に群舞は踊れないだろうなあ。
対してジゼルを演じるマリアネラ・ヌニェスは溌剌としたラテン系でお姫様より村娘が似合う
タイプ。ここでは病弱で初心なジゼルに無責任にも猛烈アタックする天然タラシのワジム王子が
見られます。一幕では完全悪者なんだよね。婚約者がいる身でジゼルに愛を誓い、その嘘を恋敵
のヒラリオンに暴露され、ジゼルは発狂→死に至ります。狂乱シーンは色々なバレエの演目のなか
でももっとも演技力を必要とする見せ場といえるでしょう。髪を振り乱して精神が崩壊していく様
はある種汚れ役といえるかも。お坊ちゃまのアルブレヒトなんてただただドン引き状態。
(↓「狂乱の場」ボリショイ版)
P7212866.JPG
主役たちだけでなくまわりのギャラリーのダンサーたちの表情といい、みなセリフが聞こえてくる
ような迫真の場面です。
一幕でジゼルがデイジーの花びらで花占いをするシーンや、”愛を誓います”という王子のマイムを
止める仕草はその後の彼女の薄幸な運命を暗示しているのです。


二幕はジゼルのお墓がある森のはずれ。村ではこの森に夜入った者は結婚前に死んだ娘たちの霊=
ウィリに死ぬまで踊らされるという言い伝えがあります。ジゼルのお墓に最初にやってきた
ヒラリオンはウィリの女王ミルタに行く手を阻まれ、沼に落ちて死にます(←全然悪くないのに)
ロイヤル版ウィリはなぜか般若の形相。私たちがやったオペラ座版はがっくりうなだれたウィリでした。
その後白いユリの花束を抱え長いマントをはためかせたアルブレヒトが登場。下手するとナルシスト
入っちゃう絵柄なのにハマりすぎるワジム王子。このシーンもジゼルが彼に花を散らすシーンも最後に
ジゼルが残していった一輪の花を拾うシーンもワジム王子が演じると断然に絵になる。
特にこのシーン大好き[ぴかぴか(新しい)]
P6212868.JPG

ミルタに死ぬまで踊らされるシーンはアルブレヒトの見せ場です。ここではジゼルの死に責任を
感じ苦悩するワジム王子の姿が見られます。最後は汗だく、息も絶え絶えになって床に倒れ伏します。
そんな彼を優しく助け起こすジゼル。すでにこの世の者ではないジゼルとのパ・ド・ドゥでは、
まるで空気のようにすり抜けていく様が、二人が地上では結ばれない運命であることを表しています。
そして朝を告げる教会の鐘の音。それはジゼルの無償の愛がアルブレヒトの罪を許し、死から救った
瞬間を意味します。
ここまでの一連の音楽の流れはほんとにドラマティックで、最後に鐘の音ですべてが浄化される幕切れ
も本当に見事。一幕でアルブレヒトの居場所を知らせるためにヒラリオンが鳴らした角笛の音が遠くで
呼応する場面がそうであったように一瞬舞台の上が静まり返るのです。その時のアルブレヒトの動揺の
表情と鐘が鳴った時のジゼルの安堵の表情は対照的。
ジゼルが残した一輪の花を大切そうに持って歩きだすアルブレヒト。「ジゼル」のラストにはがっつり
カタルシスがあります。




「二羽の鳩」とほとんどキャストがかぶってるのにみなしっかり演じ分けてるところがすごい。
ほとんど顔芸?と言えるかも。ワジム王子の「二羽の鳩」での仏頂面は笑えたけど、「ジゼル」
での沈痛な面持ちは痛々しい印象。
ジプシー役で挑発的な表情をしていたダンサーたちもここでは気の良い村人に変わっています。
ヒラリオンもミルタも前述のレッスン動画ではノーメイクのポーカーフェイスでレッスンしてました(笑)
全幕ものではみな演技する合間に踊ってるという感じ。それも舞台上のすべての人が表情作っているのです。
彼らの表情が作品にリアリティを与えていると言えます。これってどんなに踊りの真似はできても素人には
真似できない芸当だと思う。表情作りながら踊るのって最高に難しいもの。しかもだた笑みを浮かべてる
だけじゃなくて王子だったらノーブルな笑みでなきゃいけないし、仏頂面のまま踊るのも沈痛な表情で
踊るのも使い分けは相当難しいと思う。”踊る”ではなくすでに”演じる”の領域なんだよねきっと。
”音楽表現”というより”感情表現”。どこまでがお芝居でどこからが踊りなんだか。

正直今までバレエのマイムの部分なんてどーでもよかった。見たいのは踊りの方で特に男性のパート
なんてほとんど目がいかなかった。ワジム王子に注目するようになってはじめて男性ダンサーに目が行く
ようになりました。そしてできれば彼らを生の舞台で見てみたいと願うようになりました。
ガラでなく全幕もの。それもより演劇的なバレエが見たい。色んな役柄のワジム王子を堪能したい。
「ジゼル」ときたならやはり次は「ロミジュリ」が見たいです。ワジム王子の決闘シーンとかバルコニ
ーのシーンとか。それとやはり以前日本で全幕上演したという「ドンキ」なんかも。
今発売されてる「海賊」DVDはヒゲ面ワイルドなワジム王子がどーしても想像できないので今の
ところ購入予定ではないのですが、、、



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