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名作を朗読する [絵本]

終わった終わった~今年一番の大役が終わった~~♪

小学校の読書集会での「くもの糸」の朗読が昨日終わりました。
たかが朗読といえど、やはりその週ともなると朗読のことで頭がいっぱいでした。
なんかこう追い詰められていく感覚はバレエの舞台と同じ。
朗読を間違えるということはないとは思うけど、操作で不手際があったり、何か不測
の事態が起きたりしないかどうか(インフルエンザで休校とか)いらない心配事で
悶々としてました(汗)
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当日は8時半に登校、体育館で舞台装置の設営、9時半から2回のリハーサルをはさみ、
10時半から本番でした。う~ん発表会みたい。
でもいざその日を迎えてしまうと、準備段階からワイワイ楽しくて、やはりこうやって
舞台を作っていく過程が好きだなあと感じました。図書館の仕事もそうだけど、こうして
みんなでひとつの仕事に埋没してる状態が好きです。

読書集会は毎年、小学校の図書委員の子供たちの発表とセットなのですが、今年は私
の職場である図書館を取材した様子のスライドショーでした。子供たちが取材にきたその日
自分もその場にいたので楽しく見させてもらいました。
図書館の本の分類法とレファレンスの利用法などを紹介する内容で、私たちが上演する
「くもの糸」について図書館で調べた様子が映っていました。
コラボ企画だったとは私たちも知らなかった(笑)


さてさて本番は、一番心配だった子供たちのザワザワヒソヒソはまったくなく、し~んと
静まり返った中、ブラックライトシアター形式の朗読劇は始まりました。
そりゃあもう、こちらの操作の音が響くくらいに子供たちはみな静かに見入ってくれました。
後で先生たちは「ちょっと内容や言葉遣いが難しくて反応できなかったみたい」と話していま
したが、おかげで私はすっごく読みやすかった。
本番はどうしてもペースが速くなりがちなのですが、終始自分のペースを守ることができ、
音楽ともぴったりタイミングを合わせることができた♪
一番苦労したクライマックスでのくもの糸がプツリの切れる場面も、操作も音もぴったりで
なにか舞台の表と裏でひとつになった感がありました。
そしてトチらずに最後まで読み終えたときの満足感。なんかこうフツフツと満たされる感触
も久々に味わった。ああ幸せだあ~~

今回、朗読を担当するにあたり”三輪明宏”風?にとのリクエストがあったのですが、図書館
の朗読CDにあったのは俳優の上川隆也と歌手の小椋桂の朗読ヴァージョンで、
どちらもイマイチ参考にならず。こちらは読みだけでなく、操作に合わせた朗読なので
ペースが速いように思われました。
そこで参考にしたのが写真の「現代文の朗読術」という本。NHKのアナウンサーの指導
によるテキスト本で朗読CDのお手本付き。
「くもの糸」自体は載ってなかったのですが、それでもここに書かれている朗読術は
勉強になりました。本の副題にもあるように「名作には秘められリズム」があり、「朗読は
その作家の”文章のリズム”を音として起こすこと」であると。
その”リズム”のことを村上春樹氏は「前に前にと読み手を送っていく内在的な律動感」
と表現している、とも書かれていました。

全3巻あるというこの本のシリーズを完読したわけでもないのですが、これらの文章で
何となく私も言わんとしていることが理解できた。もちろん朗読CDも聞いてみた。
このNHKアナウンサーの朗読は確かに緩急があり、間があったり、リズムカルだったりと
変化に富んでいるのです。そして何より日本語の発音が滑舌よく切れがある。
聞いていてその作家の描かんとする世界が浮かんでくるようなのです。
確かに名作にはリズムがある!そしてそれはこのようなお手本CDなくとも
恐らく日本人のDNAがあれば誰でも感じ取ることができるリズムなのです。
なにせ母国語ですから。

この”文章のリズム”というのを今まで私はまったく感じてこなかった。
なにせ読み聞かせに選ぶ絵本は外国の本ばかりでしたから。ヴィジュアル重視で。
自分の読み聞かせに足りなかったのはこのリズム感だったのかな?翻訳では原作
のリズムは失われてしまうだろうから。
その点母国語の本、特にこういった文豪たちが書いた文章には計算しつくされたリズム
がある。村上氏曰く”文章を書く方法を音楽から学んだ”、”リズムがないと次の
文章がでてこない”のだそうです。
読み手も同じで文章のリズムをつかむことで淀みなく朗読できるのでしょう。
なので私も自分がこの文章に感じるままのリズム感で朗読してみることにしました。
作者、芥川龍之介の”文章のリズム”の導くままに。

「くもの糸」の主役はお釈迦様。物語は極楽にいるお釈迦様の視点から語られる。
OGさんたちからもひたすらゆっくり読むようにアドヴァイスされていたのでそれを意識しつつ、
極楽の場面は間をもって、地獄の場面はトーンを落とし、そしてカンダタがせっせとくもの糸
を登っていく場面では次第にピッチを上げて緊迫感を出すよう工夫してみました。
そしてくもの糸がプツリと切れる場面は余韻を残すように。
音楽は極楽はキーボード、くもの糸は鈴の音、地獄の場面はパーカッションとサンシー、
カンダタが登っていく場面では太鼓が次第に激しくなり、最後くもの糸が切れるシーンは
サンシーのジャン!とうい一音で表現されました。

あまりの迫力のためか?はたまたひたすら??だったのか、子供たちが静まり返っていた
おかげで、これらの演出は全てが効果的に表現できたように思います。
今この空間をリードしているのは自分の声、という快感をジンジン味わいながら朗読しました。
このシチュエーションってばめちゃめちゃ贅沢じゃない?
仲間のみんなが私の朗読を盛り上げてくれ、全校児童がその朗読を聞いてくれているという。
子供たちがどう受け取ったかどうかは別の話として、私は自己満足でお腹いっぱいでした。

子供たちがどう受け取ったか、という話はその後の顧問の先生方を交えたお茶の席でも
ありました。でもその先生は以前から「子供たちがどう受け取るかは自由で特にフォロー
はせず、こちらはそういった言語体験に触れさせる機会を与えたい」という立場なので、
それこそ”名作のリズム”が伝わればいいのではと私も思いました。
芥川龍之介の世界観が少しでも再現できれば私たちの役割は果たせるのです。

常々、踊りにも共通する話だと感じました。バレエもこういった名作も古典の領域であり
私たちができるのはそのオリジナルの再演なのだ。
演じる私たちがまずオリジナルを解釈しそれを表現するということも、踊りも朗読も
緩急のリズムがすごく大切だということも共通している。

さてさて先週の息子のクラスの朝読書では結局この本を読みました。
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子供図書館でせっかく選んでくれた「せかいいち大きな女の子」は朗読時間が12分と長く挫折。
またの機会のレパートリーとして温めておきます。
なので結局昨年から目をつけていた上記の「綱渡りの男」をネットで購入して間に合わせました。
「くもの糸」と同じ”ヒモつながり”ということで(?)
ついでにこれも昨年から目をつけていた「綱渡りの男」のドキュメント映画「Man on Wire」
も参考にと借りてみた。
しか~し、読み始める前に子供たちに「世界貿易センタービルって知ってる?」って質問
したところみんなキョト~ンだったんでこのDVDで話を広げることはちょっとやめておいた。
って今の子たちって同時多発テロのこと知らないのかなあ~それを知らないとこの本の
オチは理解できないんだけどなあ~と思いつつも、絵本自体はみな興味深そうに聞き入って
くれたのでよしとしました。見開きページなどもあり、読み聞かせ向きかと。
そして何より有難かったのは担任の先生の配慮。読み聞かせ中は廊下のドアを閉めてくれたので、
廊下のざわめきを気にすることなく読めました。先生自身も生徒と一緒に聞いてくれて、
最後に2,3人の子供たちに感想を言わせて締めてくれました。
担任自身は別のことやってて、子供たちがキョト~ンとしたままはいおしまいってクラス
がほとんどなので、このベテラン先生の配慮は有難かった。
おかげで「地上400メートルの場所で綱渡りするシーンがスリルがあった」とか「朗読が
上手なので私もそうなりたい」とか素直な子供らしい感想が聞けました。

私の解釈だと「綱渡りの男」とは「世界貿易センタービルへ捧げるオマージュ」。
「同時多発テロという悲劇の現場ともなった世界貿易センタービルで、実はこんな夢のような
出来事があったんだよ」というのがこの絵本のメッセージなのかと。

対して「くもの糸」とは?と問われれば、まあ子供向けの仏教説話と言えばその通りだけど、
キリスト教的に言い換えればくもの糸とは「天国へ続く門」だ。
小さなくもを助けたカンダタを見捨なかった慈悲深い神も、カンダタが仲間を振り切ってひとり
だけ救われようとするのを見るとバッサリと切り捨ててしまう。
「狭き門から入れ」というように、天国への入り口は狭い。
神は細い細いくもの糸を使ってカンダタに極楽に入る資質があるかを試されたのだ。
んで人生にはそんな風に神様に試される瞬間があるんだよ、神様はいつでも人間の行動を
見ているんだよというのがこの本のメッセージなのでは??絵本って深いなあ。
ってあまり解説し過ぎちゃいけないところを、うちの淡白な息子には猛烈熱弁をふるった
私なのでした(汗)



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