その衣装には魂が宿る

ふたつの衣装展を見に行ってきました。

国立新美術館の「バレエ・リュス展」と新宿高島屋の「浅田真央23年の軌跡展」です。

「バレエ・リュス展」ではまずはその色彩の華やかさに驚かされました。
それはチュールやシフォンといった素材にスパンコールやピーズをあしらった
現代のふんわりしたチュチュとはまったく異なり、ストレッチ性のなさそうな
生地に豪華な刺繍が施され、色とりどりのリボンやテープがあしらわた豪華絢爛
な衣装なのです。昔は舞台照明もなかっただろうし、原色カラーで華やかさを
演出したのかな？そしてそのデザインはとっても斬新、というか奇抜。
中近東あり極東ありの国籍不明なものも多数あり。
これでどんな振付で踊ったのだろう？？

そもそもバレエ・リュスの演目ってこんなむちゃくちゃなストーリーをどうやって
舞台化したのか？ってな内容ばかりなんです。いわゆるお姫様と王子様に妖精にって
いうファンタジックな内容でなく、間違って殺されましたみたいな血生臭いお話
ばかりでどうやって舞台を盛り上げたのかな～～
「シャエラザート」も「火の鳥」も音楽はまさに王道だけど、オリジナルストーリー
は全然知りませんでした。
なにせ映像がないので想像できません。楽譜がある音楽がほぼ確実に曲を再現
できるのに対し、舞台って再生不可能な芸術分野だからね。
伝説のバレエダンサー、ニジンスキーが着用したという衣装もありました。

女性のチュチュのようにも見えるデザインに色使い。
この衣装は「青神」というインドの神話をモチーフにした作品の衣装で、
衣装の裏には青いドーランの跡が残っているそうです。
100年前のダンサーの汗が残る衣装なのです。

こうして一世紀も前の出来事を振り返ってみるのって楽しい経験です。
その当時は当時のトレンドがありカリスマスターが存在してスキャンダルもあり。
100年前って実はそんな昔の話でなく三世代くらい前の人達の時代なんですよね。
確実に今につながっているのだと思うと不思議な気がします。

そしてもうひとつの衣装展、「浅田真央。23年の軌跡展」
こちらはまさにここ数年の記憶も生々しい出来事の記録で、その演技もリアルタイム
で見ていたのでもう涙なくしては見られない展覧会でした。
浅田真央のシニアデビューからの全衣装が網羅されていたのでは？
衣装だけでなく獲得したメダルなども全て展示されていて、同じものをジョニー
も持っているんだなあなどと想像してしまいました。
真央ちゃんの時代はそのままジョニーの時代とかぶっていて、実際試合で何度がその
演技を生で見てきたので、ほとんど全てのプログラムを今でもリアルに思い出すこと
ができます。

真央ちゃんの衣装はすべてシンメトリーなデザイン。
どの衣装も真央ちゃんのイメージそのものだなあと思いました。
淡い色合いにふんわりしたデザインでありながら、甘すぎずどこか凛とした
雰囲気があるのです。露出度もほどよく抑えられて気品があります。
それはそのまま彼女のプログラムそのものだわ。
優しさと激しさと。特にタラソワ振付のプログラムが一貫して表現しようと
していたテーマだったように思います。
「ラベンダーの花咲く庭で」「仮面舞踏会」「鐘」「白鳥の湖」「ラフマニノフ」。
どれもメリハリのある曲調に力強い振付で、真央ちゃんの強い表情も印象的でした。

こうして一同に会した衣装を見ると色んな思い出が溢れてきて胸がいっぱいになりました。
どの衣装にも真央ちゃんのパッションが宿っているようで。
最後に展示してあったのがあの「ラフマニノフ」の衣装。
この衣装であの神演技をしたんだ、、、、（涙）
ソチオリンピックなんてつい数ヶ月前の出来事なのに、もうひとつの歴史なんだなあ。
こうして振り返ってみるとやはり真央ちゃんはすごい逸材だったのだと思いました。
容姿・実力、アスリート精神。そのスター性といいここまで揃った選手ってなかなか
現れないだろうなあ。

ちなみに私が一番好みなのはこの衣装

上品なパープルが彼女の雰囲気にぴったり。
ハイネックと長袖は絶対氷上に映えると思う。何より細く見える。
肌襦袢も嫌いだしかといってノースリープってムキムキに見えるんだよね。
アメリカ女子はみんなノースリープで体操選手みたい。
それでいてこの衣装は背中はバックリ開いていて後ろ姿の美しさも損ねて
いないのです。下加減のシニヨンの位置も清楚なイメージ。
何を着ても絵になるし、どんな振付も滑りこなしてしまう。
こんな選手ってやっぱりいないです。